塾の客単価を上げる方法は、月謝の値上げだけではありません。受講する教科やコマの追加、オプション講座、家庭学習コース、季節講習、テスト対策の5つの手を、生徒の学年と困りごとに合わせて用意すると、保護者が納得したうえで1人あたりの売上を上げられます。
この記事では、客単価の考え方を整理したうえで、値上げ以外の5つの手を比べ、オプション講座・家庭学習コース・季節講習の設計手順を順に説明します。料金を案内するときに気をつけたい法律の注意点と、よくある失敗もまとめます。

塾の客単価とは
塾の客単価は、生徒1人が1年間に塾に支払う金額で考えると、打つ手が見えやすくなります。月謝だけでなく、講習費・教材費・テスト代を合わせた年間の金額で見るのがポイントです。
客単価の計算の仕方
- 月の客単価=その月の授業料収入÷その月の在籍数
- 年間の客単価=1年間の売上(月謝・講習・教材・テスト代の合計)÷年間の平均在籍数
月の客単価だけを見ると、講習のある月だけ高く見えて、年間の傾向が分かりません。年間の客単価を学年別に出しておくと、どの学年で何が足りないかが見えてきます。
値上げだけに頼らない理由
月謝の値上げは、全員の負担が一律に増えるため、退塾のきっかけになりやすい方法です。また、値上げは数年に1回しかできません。
一方、講座や講習の追加は、必要な家庭だけが選んで申し込む形になります。保護者からすると「必要なものにお金を払っている」と感じやすく、塾にとっても退塾のリスクを抑えながら売上を伸ばせます。
学年によって家庭の支出は変わる
文部科学省の「子供の学習費調査」では、公立中学校に通う生徒の補助学習費(学習塾費・家庭教師費・家庭での学習費など)の年間の平均は、中1が約17万2千円、中2が約24万9千円、中3が約39万円でした。中3で大きく増えるのは、高校受験の対策のためと考えられます。

出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」。補助学習費は学習塾費以外の学習費も含みます。最新は公式でご確認ください。
学年が上がるほど学習への支出が増えるのは自然な流れです。中1・中2では家庭学習やテスト対策、中3では講習と受験対策というように、学年ごとに用意する講座を変えると、無理のない客単価の設計になります。
値上げ以外で客単価を上げる5つの手
客単価を上げる手は、大きく5つあります。準備の手間と、保護者が価値を感じやすいかどうかで向き不向きが変わります。
| 手 | 内容 | 保護者が感じる価値 | 準備の手間 |
|---|---|---|---|
| 1 受講教科・コマの追加 | 数学だけの生徒に英語を足す、週1を週2にする | 苦手教科の対策 | 小さい(講師の空きが前提) |
| 2 オプション講座 | 計算特訓、英検対策、作文講座など | はっきりした目的がある | 中くらい |
| 3 家庭学習コース | 通塾しない日の演習と確認 | 家での勉強が続く | 中くらい(教材が要る) |
| 4 季節講習 | 夏・冬・春の集中講座 | 復習と先取り | 大きい(時間割と人員) |
| 5 テスト対策・模試 | 定期テスト前の特訓、模試 | 点数につながる | 中くらい |
受講教科・コマの追加
最も始めやすい手です。在籍生の成績表を見て、別の教科で点が伸びていない生徒に、体験の1回を勧めます。講師の空き時間がない場合は、ほかの手を先に考えます。
オプション講座
目的と期間がはっきりした短期の講座です。「中1の計算総復習(4回)」「英検3級の面接対策(2回)」のように、対象・回数・ゴールを明確にすると申し込みが集まりやすくなります。
家庭学習コース
塾に来ない日の学習を、教材と確認の仕組みで支えるコースです。部活で通塾回数を増やせない生徒にも提案できるのが利点です。詳しくは後で説明します。
季節講習
夏・冬・春の講習は、多くの塾で年間の売上の大きな部分を占めます。学年ごとに目的を分けて設計すると、「毎年同じ講習」にならずに済みます。
テスト対策・模試
定期テスト前の特訓や、外部の模試の受験です。結果が点数として見えるため、保護者が価値を判断しやすい手です。
オプション講座の設計手順
オプション講座は、在籍生の困りごとから作ると、案内したときに申し込みが集まります。講師が教えたいことからではなく、保護者面談や成績表で多く出てくる課題から選びます。
ステップ1 在籍生の困りごとから講座のテーマを選ぶ
保護者面談の記録や定期テストの結果を見て、同じ課題を抱えている生徒が多いテーマを選びます。たとえば「中1の正負の数の計算でミスが多い」「中2の英語で長文が読めない」などです。対象になる生徒が5人以上いれば、講座として成り立ちやすくなります。
ステップ2 期間・回数・定員を決める
最初は短く、2〜6回程度で終わる講座にします。長い講座は申し込みのハードルが上がり、途中で来なくなる生徒も出ます。定員は講師1人で見られる人数に合わせます。
ステップ3 料金を決める
料金は、通常授業の1コマあたりの単価を目安にします。教材を新たに用意する場合は、その費用も加えます。
計算例(説明用の仮の数字)として、通常授業が1コマ2,500円、講座が4回、教材費が1人500円なら、2,500円×4回+500円=10,500円が目安になります。在籍生向けの講座なので、通常の単価より大きく高くしないほうが申し込みにつながります。
ステップ4 在籍生に案内し、少人数で始める
案内は、対象の生徒の保護者に個別に送るのが効果的です。「全員向けのチラシ」より、「お子さまの〇〇の課題に合わせた講座です」と伝えるほうが申し込みにつながります。最初は少人数で開き、終わったら生徒の感想と結果をまとめて次回の案内に使います。
家庭学習コースの設計
家庭学習コースは、通塾していない日の学習を塾が支えるコースです。教材を渡すだけでは続かないので、何を使い、いつ確認し、分からないときにどうするかの3点を決めます。
コースで提供する3つのもの
- 教材:学年と単元に合った演習。丸つけと解説まで生徒が一人でできるものが向きます
- 確認:週に1回、取り組んだ量と正答の状況を講師が確認します
- 質問:分からない問題を、次の通塾日や決まった時間に質問できるようにします
講師の確認の時間は、授業時間外の仕事として計算に入れておきます。確認に時間がかかりすぎると、コースの利益が出ません。丸つけと解説を教材側に任せられると、講師は確認と声かけに時間を使えます。
月謝に含めるか、別料金にするか
家庭学習コースの料金の付け方は、大きく2つです。
| 付け方 | 利点 | 気をつけること | 向いている塾 |
|---|---|---|---|
| 月謝に含める | 全員が使うので学習量がそろう。退塾防止にもなる | 客単価は上がらない。月謝の見直しとセットで考える | 学習量で差別化したい塾 |
| 別料金のオプション | 必要な家庭だけが申し込む。客単価が上がる | 申し込まない生徒との差が出る | まず一部の生徒で試したい塾 |
| 通塾なしの単独コース | 商圏の外や部活で通えない生徒も対象になる | 質問対応の方法を決める必要がある | 家庭学習の教材が整っている塾 |
最初は別料金のオプションで始め、利用が増えてきたら月謝に含める形に切り替える塾もあります。
季節講習の設計
季節講習は、学年ごとに目的を分け、回数とコマ数を先に決めてから料金を決めます。毎年同じ内容を同じ料金で案内していると、保護者は「今年も同じ」と感じて申し込みが減ります。
学年と時期ごとに講習の目的を分ける
| 学年 | 夏期講習 | 冬期講習 | 春期講習 |
|---|---|---|---|
| 中1 | 1学期の総復習(正負の数・文字式) | 2学期の復習と方程式の定着 | 中1の総まとめと中2の先取り |
| 中2 | 1学期の復習と苦手単元のやり直し | 2学期の復習と中3の準備 | 受験学年に向けた総復習 |
| 中3 | 中1・中2の総復習(受験の土台) | 入試対策と演習 | 高校の準備講座 |
目的が学年ごとに違うと、案内の文面も具体的になります。
回数・コマ数と講習費の案内
講習のコマ数は、生徒が必要とする量から決めます。たとえば「中2の苦手単元のやり直し」なら、単元の数と1単元に必要なコマ数を掛けて決めます。必修のコマと、選べるコマを分けておくと、部活や家庭の予定に合わせやすくなります。
講習の案内では、総額、コマ数、1コマあたりの金額、教材費の有無を1枚にまとめます。必修と選択を分けている場合は、最小の金額と、すべて受けた場合の金額を両方書くと、保護者が判断しやすくなります。
料金を案内するときに守ること
講座や講習の料金を案内するときは、法律で決まっていることを守ります。特に、契約の書面と、割引の表示には注意が必要です。
長期・高額の契約は特定商取引法の対象になる
学習塾の契約のうち、期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものは、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たります。講習と通常授業をまとめた長期のパックなどが対象になる場合があり、契約前の書面と契約時の書面の交付、クーリング・オフ、中途解約のルールが適用されます。
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」。対象になるかは契約内容によって変わります。最新は公式でご確認ください。
「通常価格」「今だけ」の表示に注意する
「通常価格2万円のところ、今なら1万5千円」のような二重価格の表示は、比べる価格が実際に相当期間使われていた価格でなければ、景品表示法の不当表示(有利誤認)に当たるおそれがあります。早期申し込みの割引は、割引の条件と期限を正確に書きます。
出典:消費者庁「二重価格表示」
必要のない講座を勧めない
客単価を上げたいあまり、成績上必要のない講座まで勧めると、保護者の信頼を失います。面談では「受けなくても大丈夫な生徒」には、はっきりそう伝えるほうが、結果として必要なときの申し込みにつながります。
よくある失敗と避け方
客単価を上げる取り組みでよくある失敗は、次のとおりです。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 避け方 |
|---|---|---|
| オプション講座に申し込みが集まらない | 講師が教えたいテーマで作った | 面談や成績表で多い課題からテーマを選ぶ |
| 講習が毎年同じで申し込みが減った | 学年ごとの目的を分けていない | 学年×時期で目的を決め、案内文に書く |
| 家庭学習コースが続かない | 教材を渡すだけで確認していない | 週1回の確認と質問の方法を決める |
| 講師の手間が増えて利益が出ない | 丸つけや確認の時間を計算していない | 授業時間外の作業も工数に入れて料金を決める |
| 保護者から「お金のことばかり」と言われた | 案内が多すぎる、必要性の説明がない | 案内は時期を決めてまとめ、対象の家庭に絞る |
家庭学習コースの教材を自塾で持つ
家庭学習コースを作るときに一番手間がかかるのは、生徒が一人で取り組める教材の用意です。マナモンは、株式会社THREE D PLUSが運営する、LINEで使う中学生の学習アプリで、生徒が一人で解いて答え合わせまでできます。
- LINEで友だち追加するだけで使えるので、アプリのインストールや端末の配布が要りません
- 中学数学の中1〜中3の全範囲を収録しています
- 同じ単元でも数字が毎回変わる問題で、繰り返し演習できます
- 途中式を飛ばさない解説を1ステップずつ表示するので、生徒が自分で答え合わせと解き直しをできます
ただし、マナモンは生徒や保護者が個別に申し込んで使うアプリなので、塾のコースに組み込んで提供する形には対応していません。家庭学習用に生徒へすすめる使い方になります。OEMの考え方は「塾向け教材のOEMとは」で詳しく説明しています。
よくある質問
客単価と生徒数、どちらを先に増やすべきですか
在籍生の満足度が高く、講師の空き時間がある塾なら客単価の見直しから始めやすいです。教室の席や講師に余裕がない場合は、客単価を上げる手の多くが実施できないので、運営の体制を整えるのが先になります。
オプション講座は何人いれば開けますか
講師の人件費と教材費をまかなえる人数が最低ラインです。1回の授業でかかる費用を講座の料金で割ると、必要な人数が出ます。最初は少人数でも開き、実績を作ってから広げる方法もあります。
講習を受けない生徒がいても大丈夫ですか
大丈夫です。講習を受けない場合も通常授業で何をするかを説明しておくと、保護者は安心して判断できます。講習の申し込みを入塾継続の条件のように扱うと、退塾につながります。
家庭学習コースの料金はどう決めればいいですか
教材の費用と、講師が確認にかける時間の人件費を合計し、それを上回るように決めます。通塾のコースより低く設定し、通塾との組み合わせで割安になる形にすると申し込みやすくなります。
兄弟割引は客単価を下げませんか
1人あたりの金額は下がりますが、家庭単位では売上が増え、退塾もしにくくなります。割引の条件と期間を決め、書面に書いておけば、ほかの家庭との公平性も説明できます。
早期申し込みの割引は表示しても問題ありませんか
割引の条件と期限を正確に書き、実際にその条件で申し込みを受け付けていれば問題になりにくいです。実際には使っていない「通常価格」と比べる表示は避けてください。判断に迷う場合は、消費者庁の資料や専門家に確認してください。
塾・教室の方へ
マナモンは、LINEで動く中学数学の演習教材です。塾・教室での導入や、自塾の名前での提供(OEM)のご相談を受け付けています。しくみと導入までの流れをまとめた資料(4ページ)は、ご請求いただいた方にお送りしています。提供の形と料金は、お話を伺ってから個別にご案内します。
どちらもお問い合わせフォームから受け付けています。種類で「学校・塾・法人の方」を選び、お問い合わせ内容に「資料請求」または「相談」とお書きください。
メール:support@threedplus.co.jp(件名に「資料請求」とお書きください)
電話:050-8886-3060(平日 10:00〜18:00)
運営:株式会社THREE D PLUS
