塾のデジタル教材を自塾ブランドで出す意味は、大きく3つあります。他塾と教材名で比べられにくくなること、教材が「塾の指導の一部」として保護者に伝わること、そして塾のない日にも生徒と保護者が自塾の名前に触れることです。
一方で、自塾の名前で出すと生徒が他塾へ移りにくくなるのと同時に、塾のほうも教材の提供元を変えにくくなります。この記事では、自塾ブランドで出すときに名前が出る場所、保護者からの見え方、乗り換えにくさの両面、表示で気をつけることを順に整理し、最後に始め方をまとめます。
自塾ブランドのデジタル教材とは
自塾ブランドのデジタル教材とは、外部の会社が作った教材や学習システムに自塾の名前やロゴをつけ、自塾の教材として生徒に提供するものです。一般にOEMやホワイトラベルと呼ばれる形で、教材の開発や更新は提供元が担います。
自塾ブランドで出すとはどういうことか
生徒や保護者が教材を開いたとき、最初に目に入るのが自塾の名前になる、というのが基本の考え方です。教材の中身を自塾で作る必要はありません。逆に、中身をすべて自作していても、市販のアプリの中で配っていれば、見え方は「〇〇というアプリの中の塾のページ」になります。
自塾ブランドで出す型は、名前だけを変える型から、自塾の教材を追加できる型、ゼロから開発する型まであります。型の違いと費用のかかり方は「塾向け教材のOEMとは?4つの型と費用のかかり方」で詳しく説明しています。
自塾の名前が出る場所
どこまで自塾の名前で出せるかは、サービスと契約によって違います。生徒と保護者が目にする場所を一覧にして、どこが自塾の名前になるかを確認しておきます。
| 場所 | 生徒・保護者が見る場面 | 確認すること |
|---|---|---|
| 教材やアカウントの名前 | 初めて登録するとき、毎回開くとき | 自塾の名前やロゴに変えられるか |
| 最初の画面・メニュー | 毎回の学習 | 提供元の名前やロゴが残るか |
| 案内文・使い方の資料 | 入塾時、導入時 | 塾の名前で配れる形か |
| 通知・メッセージの差出人 | 課題のお知らせ、連絡 | 差出人が自塾の名前になるか |
| 利用規約・個人情報の説明 | 登録するとき | 提供元の名前が出る箇所と、その説明 |
| 問い合わせ先 | 操作で困ったとき | 塾と提供元のどちらが受けるか |
利用規約や個人情報の説明には、提供元の名前が残ることが多くあります。隠すのではなく、保護者に聞かれたときに「教材の仕組みは〇〇社のものを使い、内容と使い方は塾で決めています」と説明できるようにしておくと安心です。
自塾の名前で出す3つの意味
自塾の名前で出す意味は、比べられにくさ、指導としての見え方、接点の多さの3つです。どれも、教材そのものの良し悪しとは別の効果です。

他塾と教材名で比べられにくくなる
保護者が塾を比べるとき、教材名が同じだと、残る違いは月謝と通いやすさになりがちです。自塾の名前がついた教材は、ほかの塾の教材と名前で並べて比べることができません。比べられるのは「この塾の指導全体」になり、月謝だけで決められにくくなります。
教材が塾の指導の一部として伝わる
外部のサービス名のまま渡すと、保護者には「塾が別のサービスを紹介している」と映ることがあります。自塾の名前で渡すと、授業と家庭学習が一つの指導としてつながって見えます。授業で扱った単元を家で演習し、次の授業で確かめる流れを、保護者にも説明しやすくなります。
塾のない日にも自塾の名前に触れる
週2回通う生徒でも、家庭学習の教材を毎日開けば、自塾の名前に触れる回数は週2回から毎日に増えます。保護者が子どものスマートフォンの画面をのぞいたときに見えるのも自塾の名前です。塾の存在を思い出してもらう回数が増えることは、在籍している生徒の満足度にも、兄弟や友人への紹介にも関わります。
保護者からどう見えるか
保護者からの見え方は、入塾を検討しているとき、通塾しているとき、面談のときで変わります。場面ごとに、どう伝えるかを決めておきます。
| 場面 | 保護者が気にすること | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 入塾を検討しているとき | ほかの塾と何が違うのか | 授業と家庭学習を同じ流れで見ていることを、教材の画面を見せて説明する |
| 通塾しているとき | 家で何をしているのか、塾は見ているのか | 教材の名前と、塾が確認するタイミングを案内に書く |
| 面談のとき | 成績が上がるのか、何が課題なのか | 家庭学習の取り組みを、授業での様子と合わせて話す |
入塾を検討しているとき
体験授業や入塾面談で、教材の画面を実際に見せます。「宿題はこの教材で出します。解き終わると塾にも分かるので、次の授業で確かめます」のように、塾の指導の流れの中で説明すると、自塾の名前で出している意味が伝わります。教材の機能を並べるより、使う場面を1つ見せるほうが伝わりやすくなります。
通塾しているとき
保護者が気にするのは、子どもが家で本当に勉強しているか、塾がそれを見ているか、です。入塾時の案内に、教材の名前、家で使う時間の目安、塾が確認するタイミングを書いておきます。教材の名前が自塾の名前なので、家庭でも「塾の宿題」として扱われやすくなります。
面談のとき
面談では、授業の様子に加えて、家庭学習の取り組みを話題にします。どの単元を何回解いたか、どこで間違えたかを講師が把握していれば、具体的な話ができます。教材を自塾の名前で出していると、こうした話が「塾の指導の結果」として伝わります。
乗り換えにくさは両方向にある
自塾ブランドの教材は、生徒と保護者にとって他塾へ移りにくくなる要素になります。同時に、塾にとっても教材の提供元を変えにくくなる要素になります。両方を理解したうえで契約することが大切です。
| 方向 | 起きること | 塾がしておくこと |
|---|---|---|
| 生徒・保護者 → 他塾 | 慣れた教材と学習の記録を手放したくなくなる | 学習の記録を面談で使い、価値を伝える |
| 塾 → 別の提供元 | 教材名を変えると案内や説明をやり直すことになる | 教材名を自塾で決め、解約時のデータの扱いを確認する |
生徒と保護者が他塾へ移りにくくなる
慣れた画面で、これまでの学習の記録が残っている教材は、手放すのに抵抗があります。ただし、これは教材が使われていてこそ働く効果です。使われていない教材は引き止めにはなりません。退塾を防ぐ効果を期待するなら、まず使い続けてもらう運用が先になります。
塾も提供元を変えにくくなる
自塾の名前で教材を出すと、保護者はその名前で教材を覚えます。提供元を変えると、教材の名前や画面が変わり、案内のやり直しが必要になります。学習の記録が新しい教材に引き継げないこともあります。
これを避けるには、教材の名前を提供元の製品名ではなく自塾で決めた名前にしておくこと、解約時に学習の記録を書き出せるかを契約前に確認しておくことが有効です。提供元を変えても、自塾の教材名はそのまま使えます。
自塾ブランドで出すときの注意点
自塾ブランドで出すときは、表示の正確さ、教材名の権利、問い合わせの窓口の3つに注意します。
「オリジナル教材」の表示は事実に合わせる
外部の教材に自塾の名前をつけて出すこと自体は、一般的な提供の形です。ただし、チラシやホームページで、実際とは違う内容を伝えないように注意します。たとえば、外部の教材をそのまま使っているのに「講師が一から作った完全オリジナル教材」と書くのは事実と違います。
景品表示法では、商品やサービスの内容を実際のものよりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)が禁止されており、うっかり誤って表示した場合も対象になります。「当塾の指導に合わせて提供しているデジタル教材」のように、事実に沿った書き方にしておけば問題になりにくくなります。
出典:消費者庁「優良誤認とは」
教材名が他社の商標と重ならないか確かめる
教材に新しい名前をつけるときは、同じ名前や似た名前が、教育の分野ですでに商標として登録されていないかを確かめます。特許庁の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で無料で調べられます。自塾で長く使う名前なら、商標登録も検討します。出願料と登録料は区分の数で変わるので、最新の料金は特許庁の案内で確認し、迷ったら弁理士に相談してください。
出典:特許庁「初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~」
問い合わせの窓口を決める
自塾の名前で出している以上、生徒と保護者は操作の質問も塾に寄せてきます。ログインできない、画面が動かない、といった質問に、塾が答えるのか、提供元の窓口を案内するのかを決めておきます。提供元に窓口がある場合も、最初の受け口は塾にして、よくある質問への答えを講師で共有しておくと対応がそろいます。
自塾ブランドで始めるまでの4ステップ
自塾ブランドのデジタル教材は、次の4つのステップで始めます。教材の契約より先に、名前と伝え方を決めておくのがポイントです。
ステップ1 何を自塾の名前で出すかを決める
教材全体を自塾の名前にするのか、家庭学習のコースとして名前をつけるのかを決めます。たとえば「〇〇塾 家庭学習コース」のように、教材名ではなくコース名に自塾の名前をつける方法もあります。
ステップ2 名前が出る場所を提供元に確認する
上の「自塾の名前が出る場所」の表をもとに、どこが自塾の名前になり、どこに提供元の名前が残るかを、実際の画面で確認します。契約前に、生徒と保護者が見る画面と通知をすべて見せてもらうのが確実です。
ステップ3 教材名と案内文を作る
教材やコースの名前を決め、商標の重なりを確かめます。そのうえで、保護者向けの案内文を作ります。案内文には、何のための教材か、家でどう使うか、塾がどう確認するか、困ったときの連絡先の4点を入れます。
ステップ4 在籍生から始めて、面談で伝える
まずは在籍している生徒から始め、使い方が定着してから入塾案内やホームページに載せます。面談で家庭学習の取り組みを話題にし、自塾の指導の一部として伝わっているかを確かめます。
既製のアプリを生徒にすすめる選択肢
自塾ブランドの教材を用意するまでの間は、既製のアプリを生徒にすすめる方法もあります。たとえばマナモンは、株式会社THREE D PLUSが運営する、LINEで使う中学生の学習アプリです。
- LINEで友だち追加するだけで使えるので、アプリのインストールや端末の配布が要りません
- 対象は中学数学の中1〜中3の全範囲です
- 同じ単元でも数字が毎回変わる問題で、家庭学習の演習を増やせます
- 途中式を飛ばさない解説を1ステップずつ表示します
- 現役の塾講師が作問しています
マナモンは自塾の名前で出すOEMの形ではなく、生徒一人ひとりが自分のLINEで友だち追加して使うアプリです。
よくある質問
外部の教材に自塾の名前をつけて出しても問題ありませんか
提供元との契約で認められていれば、一般的な提供の形です。ただし、チラシやホームページで「一から自作した教材」のように事実と違う表示をするのは避けてください。
提供元の名前は完全に消せますか
サービスによります。画面からは消せても、利用規約や個人情報の説明に提供元の名前が残ることがあります。保護者に聞かれたときに説明できるようにしておくと安心です。
小規模な個人塾でも自塾ブランドで出せますか
出せます。名前だけを自塾仕様にする型なら、初期費用が小さく、短い期間で始められることが多いです。最低契約数や最低契約期間は、事前に確認してください。
自塾ブランドにすると退塾は減りますか
教材と学習の記録があることで、他塾へ移る心理的な負担は大きくなります。ただし、使われていない教材では効果がありません。使い続けてもらう運用と、面談での報告を合わせて行うことが前提です。
教材の名前は商標登録したほうがいいですか
長く使う名前なら検討する価値があります。少なくとも、同じ分野で似た名前が登録されていないかを、J-PlatPatで確認してから使い始めてください。
提供元を変えたくなったらどうなりますか
教材の画面や機能が変わるため、生徒と保護者への案内をやり直すことになります。教材名を自塾で決めておく、解約時に学習の記録を書き出せるか確認しておく、の2点で負担を小さくできます。
マナモンについて
マナモンは、株式会社THREE D PLUSが運営する、LINEで使う中学生の学習アプリです。生徒が自分のスマートフォンのLINEから、中1〜中3の数学の問題を単元ごとに解いて自習できます。問題の数字は毎回変わり、答えと解説もその場で確かめられます。
塾・教室向けの導入プランはありません。塾で使う場合も、生徒一人ひとりが自分のLINEで友だち追加して使う形です。
