塾向け教材のOEMとは、教材会社やシステム会社が作った教材・学習システムを、自塾の名前やロゴをつけて生徒に提供する仕組みです。教材を一から作らずに「自塾のオリジナル教材」を持てるのが利点で、個人塾や小規模塾でも検討しやすくなっています。
一方で、どこまで自塾の名前で出せるのか、費用は生徒が増えるとどう変わるのか、解約したら生徒の学習履歴はどうなるのかは、サービスによって大きく違います。この記事では、塾長が判断に迷いやすい点を、OEMの型、費用のかかり方、契約で確認する項目の順に整理します。

塾向け教材のOEMとは
塾向け教材のOEMは、外部の会社が作った教材や学習システムを、自塾のサービスとして生徒・保護者に提供する形です。生徒から見ると「この塾の教材」になり、裏側の開発や更新は提供元の会社が担います。
OEMの意味と、塾の場合に指すもの
OEMはもともと製造業の言葉で、他社のブランドで販売される製品を製造することを指します。塾の教材でいうと、次のようなものがOEMと呼ばれています。
- 学習アプリやeラーニングの画面に、自塾のロゴや塾名を表示して提供する
- 教材会社のテキストの表紙や奥付を、自塾仕様にして印刷する
- 学習システムの基盤だけを借り、自塾で作ったプリントや動画を載せる
共通しているのは、「生徒が受け取るときには自塾の教材として見える」という点です。
ホワイトラベル・再販・フランチャイズとの違い
似た言葉がいくつかあり、提供元によって使い方が少しずつ違います。契約の話をするときに食い違いが起きやすいので、意味をそろえておきます。
| 呼び方 | 自塾の名前で出せるか | 中身を変えられるか | 塾の運営方法への縛り |
|---|---|---|---|
| OEM | 出せる(範囲は契約次第) | 一部変えられることが多い | ほぼない |
| ホワイトラベル | 出せる(提供元の名前を消す) | 基本は変えない | ほぼない |
| 再販(代理販売) | 提供元の名前のまま | 変えない | ほぼない |
| フランチャイズ | 本部の名前で出す | 変えない | 授業方法・料金・看板まで決まりがある |
OEMとホワイトラベルはほぼ同じ意味で使われることもあります。言葉より、「どこに自塾の名前が出て、どこに提供元の名前が残るか」を具体的に確認するほうが確実です。
紙の教材とデジタル教材の違い
紙の教材のOEMは、表紙や体裁を自塾仕様にして印刷する形が中心です。中身の改訂は年に1回程度で、在庫と印刷のロットが費用に影響します。
デジタル教材のOEMは、ログイン画面やアプリ名、ドメインなどを自塾仕様にする形が中心です。教材の更新は提供元が随時行い、費用は月額や生徒数に連動することが多くなります。この記事では、問い合わせが増えているデジタル教材のOEMを中心に説明します。
塾長がOEMを検討する理由
OEMを検討する塾の目的は、おおむね次の3つです。どれを一番の目的にするかで、選ぶべき型が変わります。
- 他塾と比べられにくくする:大手と同じ教材名が並ぶと、保護者は月謝の安さで比べます。自塾の名前がついた教材は、ほかの塾と単純に比べられません
- 演習を仕組みにして講師の負担を減らす:講師の採用が難しくなるなか、演習と丸つけ、解説を教材側に持たせれば、講師は質問対応と声かけに時間を使えます
- 通塾していない生徒向けのコースを作る:部活で通えない生徒や、商圏の外にいる生徒に向けて、家庭学習のコースを月額で提供できます
講師不足は多くの塾が抱える課題で、個別指導では講師1人が見られる生徒数に限りがあります。演習の部分を教材に任せる考え方は、自立学習型の塾が増えている背景とも重なります。
OEMの4つの型
塾向け教材のOEMは、大きく4つの型に分けられます。自塾で用意するものが多い型ほど差別化しやすく、そのぶん手間と費用がかかります。
型1 既製の教材に自塾の名前をつける
提供元が作った教材とシステムをそのまま使い、画面のロゴや塾名だけを自塾仕様にする型です。最も早く始められ、初期費用も小さく済みます。
ただし中身は他の導入塾と同じなので、保護者が教材名や画面を調べると、同じものだと分かることがあります。「名前が違うだけ」と受け取られない説明が必要です。
型2 基盤だけ借りて自塾の教材を載せる
学習システム(LMS)の基盤を借り、問題・プリント・解説動画は自塾で作って載せる型です。教材の中身で差別化できますが、教材を作り続ける人手が要ります。
すでに自作プリントや授業動画がたくさんある塾では、それを生徒が家で使える形にする手段として向いています。
型3 教材と基盤をセットで提供してもらう
型1と型2の中間で、提供元の教材を土台にしつつ、自塾の教材を追加したり、単元の並びを自塾のカリキュラムに合わせたりできる型です。
追加できる範囲は提供元によって違います。「自作のプリントを載せられるか」「単元の表示順を変えられるか」は、資料請求の段階で確かめておきましょう。
型4 ゼロから作ってもらう(受託開発)
教材もシステムも、自塾専用に開発してもらう型です。自由度は最も高い一方、開発費が大きく、完成までに数か月以上かかります。
複数教室を持つ塾や、フランチャイズ本部として加盟塾に配る予定がある塾で検討される型で、1教室の個人塾にはあまり向きません。
| 型 | 始めるまでの期間 | 初期費用 | 差別化のしやすさ | 自塾の手間 | 向いている塾 |
|---|---|---|---|---|---|
| 型1 名前をつける | 短い | 小さい | 低い | 少ない | まず試したい個人塾 |
| 型2 基盤を借りる | 中くらい | 小〜中 | 高い | 多い | 自作教材が多い塾 |
| 型3 セット+追加 | 中くらい | 中くらい | 中〜高 | 中くらい | 小規模〜中規模の塾 |
| 型4 受託開発 | 長い | 大きい | 最も高い | 多い | 複数教室・本部 |
費用のかかり方は4種類
OEMの費用は、金額そのものより「どの単位でかかるか」を先に確認することが大切です。同じ月額でも、生徒数が増えたときの負担が大きく変わるためです。
初期費用
ロゴの差し替え、ドメインやアプリ名の設定、初期データの登録などにかかる費用です。0円のサービスもあれば、受託開発に近い型では大きな金額になります。初期費用が0円でも、最低契約期間が長く設定されていることがあるので、あわせて確認します。
月額固定
生徒数に関係なく、毎月決まった金額がかかる形です。生徒が増えるほど1人あたりの費用が下がるので、生徒数が多い塾や、これから増やしたい塾に向きます。逆に生徒が少ないうちは割高になります。
生徒1人あたりの単価(ID課金)
利用する生徒の数に応じて費用がかかる形です。生徒が少ないうちは負担が小さく、始めやすいのが利点です。ただし生徒が増えるとそのまま費用が増えるので、月謝に上乗せする金額をあらかじめ決めておく必要があります。
売上の分配(レベニューシェア)
塾が生徒から受け取る料金の一部を提供元に支払う形です。売れた分だけ費用がかかるので、リスクは小さくなります。一方、塾が料金を自由に決められない契約になっていることがあるので、販売価格の決め方を必ず確認します。
| 生徒数 | 月額固定(月3万円の場合) | ID課金(1人月1,000円の場合) |
|---|---|---|
| 10人 | 30,000円(1人あたり3,000円) | 10,000円 |
| 30人 | 30,000円(1人あたり1,000円) | 30,000円 |
| 60人 | 30,000円(1人あたり500円) | 60,000円 |
上の表は考え方を示すための計算例で、金額は説明用の仮の数字です。実際の料金は各サービスにお問い合わせください。

この例では、30人を境に月額固定のほうが有利になります。自塾の生徒数と、1年後に目指す生徒数の両方で計算しておくと、選び方を間違えにくくなります。
公開されている条件の例
塾向けの教材サービスの多くは、OEMの料金や条件を公開しておらず、説明会や問い合わせで個別に案内しています。
公開されている例としては、eラーニングシステム「LearnO」(株式会社Mogic)が、自社ブランドで再販できるOEM制度を2022年に発表しています。発表時点では、初期費用0円、販売ノルマなし、1か月単位の契約、画面の配色やドメインの変更が可能、という内容でした。企業研修向けの色合いが強いサービスですが、OEMの条件を考えるときの目安になります。
出典:株式会社Mogicのプレスリリース(2022年8月25日)。最新の条件は公式サイトでご確認ください。
契約前に確認する10項目
OEMの契約では、料金表に書かれていない部分で後から困ることが多くあります。資料請求や説明会の段階で、次の10項目を質問しておくと安心です。
| No | 確認する項目 | 質問の例 |
|---|---|---|
| 1 | 自塾の名前が出る範囲 | ロゴ、塾名、アプリ名、ドメイン、メールの差出人まで変えられますか |
| 2 | 提供元の名前の表示 | 画面や利用規約に提供元の名前は残りますか |
| 3 | 生徒データの持ち主 | 生徒の個人情報と学習履歴は、どちらの管理になりますか |
| 4 | データの書き出し | 学習履歴をCSVなどで書き出せますか |
| 5 | 解約したときの扱い | 解約後、生徒のアカウントと学習履歴はどうなりますか |
| 6 | 最低契約期間と自動更新 | 最低何か月の契約で、更新はいつ申し出ればよいですか |
| 7 | 販売価格の決め方 | 生徒に請求する金額は塾が自由に決められますか |
| 8 | 教材の追加・変更 | 自塾のプリントや動画を載せられますか。単元の順番を変えられますか |
| 9 | 教材の改訂 | 教科書の改訂や誤りの修正は、どのくらいの頻度で行われますか |
| 10 | 問い合わせの窓口 | 生徒や保護者からの操作の質問には、誰が答えますか |
10項目のうち、特に後から変えにくいのが3つあります。
生徒データと学習履歴の持ち主
生徒の学習履歴は、面談で成績の伸びを説明するときの材料になります。データが提供元の管理になっている場合、塾が自由に使えないことがあります。少なくとも、塾が必要なときに書き出せるかを確認しておきましょう。
解約したときの扱い
別のサービスに乗り換えるときや、契約を見直すときに問題になります。解約と同時に学習履歴が消える契約だと、生徒は一から学習をやり直すことになります。解約後に一定期間データを保管してもらえるか、書き出してから解約できるかを確かめます。
販売価格を塾が決められるか
自塾の名前で出す以上、料金も自塾のコース設計に合わせたいところです。売上の分配型では、提供元が販売価格を決めている場合があります。月謝に含めるのか、オプションとして別料金にするのかを、契約前に決められるようにしておきます。
よくある失敗と避け方
OEMの導入でよく聞く失敗は、次の3つです。どれも契約前の確認と、導入の目的をはっきりさせることで防げます。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 避け方 |
|---|---|---|
| 名前を変えただけで差別化にならなかった | 中身が他の導入塾と同じで、保護者に説明できる違いがない | 自塾の教材を追加できる型を選ぶか、使い方(宿題・面談での報告)で違いを出す |
| 解約したら学習履歴が消えた | 解約時の扱いを確認していなかった | 契約前に書き出しの可否と保管期間を確認する |
| 生徒が増えるほど費用が重くなった | ID課金のまま生徒数が増えた | 生徒数の目標で費用を計算し、料金の切り替えができるか確認する |
導入までの流れ
OEMの導入は、次の5つのステップで進めると失敗が少なくなります。いきなり全生徒に導入せず、少人数で試す期間を設けるのがポイントです。
ステップ1 目的と対象の生徒を決める
「他塾との差別化」「講師の負担を減らす」「通塾できない生徒向けのコースを作る」のうち、何を一番の目的にするかを決めます。あわせて、対象の学年と教科を絞ります。目的が決まると、比べるべき型と費用の形が決まります。
ステップ2 資料請求と説明会で条件を集める
2〜3社から資料を取り寄せ、上の10項目を同じ順番で質問します。料金を公開していないサービスが多いので、質問をそろえておくと比べやすくなります。
ステップ3 少人数で試す
体験期間やトライアルがあれば、5〜10人ほどの生徒で1〜2か月試します。見るべきなのは、生徒が自分から使い続けたか、講師の手間が本当に減ったか、保護者から質問が来たときに答えられたか、の3点です。
ステップ4 契約と料金の設計
試した結果をもとに契約します。生徒への料金は、月謝に含める、オプションとして月額で追加する、季節講習とセットにする、などの方法があります。月謝に含める場合も、教材の価値が伝わるように明細や案内に名前を書いておくと効果的です。
ステップ5 保護者への説明
保護者には「何のための教材か」「家でどう使うか」「塾はどう確認するか」の3点を伝えます。導入して終わりではなく、面談で学習状況を報告すると、教材の価値が伝わり、退塾の防止にもつながります。
既製のアプリを生徒にすすめる方法
OEMの準備が大きいと感じる場合は、生徒が個人で使える既製のアプリを家庭学習にすすめる方法もあります。たとえばマナモンは、株式会社THREE D PLUSが運営する、LINEで使う中学生の学習アプリです。LINEで友だち追加するだけで使えるため、アプリのインストールや端末の配布が要りません。
- 対象は中学数学の中1〜中3の全範囲です
- 同じ単元でも数字が毎回変わる問題で、答えの丸暗記ではなく解き方を確かめられます
- 途中式を飛ばさない解説を、1ステップずつ表示します
- 現役の塾講師が作問しています
マナモンは自塾の名前で出すOEMの形ではなく、生徒一人ひとりが自分のLINEで友だち追加して使うアプリです。塾で使う場合は、家庭学習の教材の一つとして生徒にすすめる形になります。
よくある質問
小規模な個人塾でもOEMは使えますか
使えます。生徒数が少ないうちは、生徒1人あたりの単価で費用がかかるサービスや、初期費用の小さい型1・型3から始めると負担を抑えられます。最低契約期間と、生徒数の下限があるかどうかは確認が必要です。
OEMとフランチャイズの違いは何ですか
OEMは教材やシステムを自塾の名前で使う仕組みで、塾の運営方法には基本的に縛りがありません。フランチャイズは本部の看板で塾を運営する仕組みで、授業の進め方や料金、加盟金・ロイヤリティなどの決まりがあります。
自塾のロゴやドメインで出せますか
サービスによります。ロゴの表示だけのもの、アプリ名やドメインまで変えられるもの、提供元の名前が画面に残るものがあります。契約前に、生徒と保護者が目にする画面とメールをすべて見せてもらうと確実です。
解約したら生徒の学習履歴はどうなりますか
サービスと契約によって違います。解約と同時に削除されるもの、一定期間保管されるもの、書き出せるものがあります。乗り換えの可能性があるなら、書き出しの可否を必ず確認してください。
自塾で作ったプリントや動画を載せられますか
型2・型3のサービスなら載せられることが多いです。ファイルの形式や容量、載せた教材の著作権の扱いも確認しておきましょう。市販の問題集や入試問題をそのまま載せる場合は、権利者の許諾が必要です。
OEMの費用は経費になりますか
教材やシステムの利用料は、一般的には塾の事業の経費として扱われます。具体的な処理は、顧問の税理士にご確認ください。
マナモンについて
マナモンは、株式会社THREE D PLUSが運営する、LINEで使う中学生の学習アプリです。生徒が自分のスマートフォンのLINEから、中1〜中3の数学の問題を単元ごとに解いて自習できます。問題の数字は毎回変わり、答えと解説もその場で確かめられます。
塾・教室向けの導入プランはありません。塾で使う場合も、生徒一人ひとりが自分のLINEで友だち追加して使う形です。

