塾の退塾防止は、退塾の理由を分類し、防げる退塾に毎月決まった手を打つことから始まります。退塾は申し出の日に突然決まるものではなく、多くの場合、その1〜3か月前から欠席や宿題の変化、保護者の連絡の減り方にサインが出ています。
この記事では、退塾理由の5つの分類、サインの見つけ方、月次で回す4つのステップ、保護者への報告の型を順に説明します。あわせて、退塾の申し出を受けたときの対応と、トラブルを防ぐための解約ルールの決め方もまとめます。

退塾防止で最初に押さえること
退塾防止は、全員を引き止めることではありません。防げる退塾と防げない退塾を分け、防げるものに先回りすることが目的です。そのためには、退塾がいつ、どの理由で起きているかを数字で持っておく必要があります。
退塾は申し出の前に決まっている
保護者が「今月でやめます」と伝えてくるときには、家庭の中ではすでに話がついていることがほとんどです。申し出の場で引き止めても、気持ちが戻ることはあまりありません。
だからこそ、申し出の前に出ているサインに気づけるかどうかが分かれ目になります。欠席が増えた、宿題を忘れる回数が増えた、保護者からの返信が遅くなった、といった変化は、塾の側で記録していれば必ず見えます。
退塾率を毎月数字で持つ
退塾防止の効果を確かめるには、まず退塾率を毎月記録します。計算は次のとおりです。
- 月の退塾率=その月の退塾者数÷月初の在籍数
- 年間の退塾率=1年間の退塾者数÷年間の平均在籍数
計算例(説明用の仮の数字)として、月初の在籍が40人でその月に2人退塾すれば、月の退塾率は5%です。数字そのものより、学年別・理由別に並べて、どこで退塾が増えているかを見ることが大切です。卒業による退塾は別に数えます。
退塾理由を5つに分類する
退塾理由は、成績・効果、時間、費用、人間関係、家庭の事情の5つに分けると、打つ手を決めやすくなります。保護者が口にする理由と本当の理由が違うこともあるので、言われた言葉をそのまま記録せず、分類して残します。
| 分類 | 保護者がよく口にする言葉 | 背景にあることが多い理由 | 塾が防げるか |
|---|---|---|---|
| 成績・効果 | 成績が上がらない | 何をしているか見えない、伸びを説明されていない | 防げる |
| 時間 | 部活が忙しくなった | 通塾日が合わない、宿題が負担 | 一部防げる |
| 費用 | 家計が厳しい | 費用に見合う効果が感じられない | 一部防げる |
| 人間関係 | 本人が行きたがらない | 講師との相性、教室の雰囲気、友人関係 | 防げる |
| 家庭の事情 | 引っ越すことになった | 転居、家族の事情 | 防げない |
成績・効果への不満
最も多く、最も防ぎやすい理由です。成績が上がらないこと自体より、「塾で何をしていて、どこまでできるようになったのか」が保護者に見えていないことが不満の中心になっていることがよくあります。テストの点が横ばいでも、単元ごとの到達や宿題の取り組みを伝えていれば、保護者の受け止め方は変わります。
時間・部活・通塾の負担
中1の夏以降や、中2で部活の中心になる時期に増えます。通塾日を変える、授業の時間帯を変える、通えない週は家庭学習に切り替える、といった選択肢を塾の側から出せるかどうかで、退塾か継続かが分かれます。
費用
講習の案内や、学年が上がって月謝が上がる時期に表に出ます。純粋に家計の事情であることもありますが、「この金額に見合っているか」という効果の問題と重なっていることも多いので、成績・効果の分類と合わせて見ます。
人間関係・教室の雰囲気
講師との相性、教室内の友人関係、私語の多さなどです。生徒本人は理由を言わないことが多く、保護者も「本人が行きたがらない」としか伝えないことがあります。担当講師を替える、座席を替える、といった手で防げる場合があります。
家庭の事情・転居
転居や家族の事情による退塾は、塾の努力では防げません。ここは記録だけ残し、防止策の対象からは外します。転居先でも続けられる家庭学習の手段があれば案内してもよいでしょう。
退塾のサインを見つける
退塾のサインは、出欠・宿題・保護者との連絡の3か所に出ます。どれも塾がふだん記録している情報なので、月に1回まとめて見る仕組みにすれば、特別な道具がなくても気づけます。
| サイン | 気づく場面 | 最初にすること |
|---|---|---|
| 欠席・遅刻が前月より増えた | 出欠の記録 | 本人に理由を聞く。部活や体調なら日程変更を提案 |
| 宿題の未提出が続く | 宿題の確認 | 量と難しさが合っているかを見直す |
| 授業中に質問しなくなった | 講師の報告 | 担当講師と状況を共有し、声かけを増やす |
| 自習室に来なくなった | 自習の記録 | 来なくなった時期と理由を本人に聞く |
| 保護者の返信が遅い・短い | 連絡の履歴 | 次の報告を前向きな内容で早めに送る |
| 講習の申し込みが遅い・断られた | 講習の受付 | 費用の不安か、時間の問題かを確かめる |
サインが1つだけなら様子見でかまいません。2つ以上重なった生徒は「要注意」として、次に説明する月次のサイクルで優先的に手を打ちます。
月次で回す退塾防止の4ステップ
退塾防止は、思いついたときにやるのではなく、1か月の中で決まった週に決まった作業をするほうが続きます。ここでは、講師が数人の小規模塾で回しやすい4つのステップを紹介します。

ステップ1 月初に前月の記録を一覧にする
月の最初の授業日までに、生徒ごとの出席率、宿題の提出率、自習の回数、保護者との連絡の有無を1枚の表にまとめます。表計算ソフトで十分です。サインが2つ以上ある生徒に印をつけ、要注意の一覧を作ります。
ステップ2 第2週に要注意の生徒と話す
要注意の生徒には、授業の前後に5分ほど時間を取り、最近の様子を聞きます。「最近どう?」ではなく、「水曜日に来られない日が続いているけど、部活の予定が変わった?」のように、記録から分かる事実を元に聞くと話が進みます。
ステップ3 第3週に保護者へ月次の報告を送る
全員の保護者に、月1回の報告を送ります。要注意の生徒の保護者には、報告に加えて、日程変更やコース変更などの提案を添えます。報告の型は次のH2で説明します。
ステップ4 月末に講師で共有して翌月の手を決める
月末に15〜30分の講師ミーティングを開き、要注意の生徒の状況と、打った手の結果を共有します。担当講師の変更、宿題の量の調整、面談の設定など、翌月にやることを決めて、ステップ1の一覧に書き込みます。
保護者への報告の型
保護者への報告は、良いことと課題を両方伝え、次の1か月で何をするかまで書くと、塾が子どもを見ていることが伝わります。毎回ゼロから書くと続かないので、型を決めておきます。
報告に入れる4つの項目
- 今月できるようになったこと(単元名や問題の種類まで具体的に)
- 今の課題(1つに絞る)
- 来月塾でやること
- 家でお願いしたいこと(宿題の声かけ、提出日の確認など)
課題を3つも4つも並べると、保護者は不安になるだけです。課題は1つに絞り、それに対して塾が何をするかを必ずセットにします。
報告文の例
次のように、短くても具体的に書きます。
例:今月は一次方程式の文章題に取り組み、速さの問題は自分で式を立てられるようになりました。課題は、かっこを外すときの符号のミスです。来月は計算の見直しの手順を毎回の授業で練習します。ご家庭では、宿題の提出日(毎週木曜)にお声がけいただけると助かります。
頻度と手段の決め方
報告の手段は、内容によって使い分けます。
| 手段 | 向いている内容 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| メッセージ(メール・連絡アプリ) | 月次の報告、日程の連絡 | 月1回+必要なとき |
| 電話 | 欠席が続く、トラブルがあったとき | 必要なときすぐ |
| 面談 | 学期のまとめ、進路、コース変更 | 学期に1回(年3回)程度 |
| 書面(成績表・通信) | テスト結果のまとめ、講習の案内 | テストごと・講習前 |
悪い知らせだけを電話で伝えると、塾からの電話そのものが保護者の負担になります。良い知らせを伝える電話や報告も、意識して入れるようにします。
時期別に起きやすい退塾と先回り
退塾には、起きやすい時期があります。時期ごとの理由を知っておけば、申し出が来る前に手を打てます。
| 時期 | 起きやすい理由 | 先回りの手 |
|---|---|---|
| 中1の5〜7月 | 部活が始まり、通塾日が合わなくなる | 入塾時に部活の予定を聞き、通塾日を決め直す時期を伝えておく |
| 定期テストの返却後 | 点数が上がらなかった | 返却前に、単元ごとの出来と次の対策を報告する |
| 講習の案内の時期 | 講習費の負担 | 講習の目的と、受けない場合の通常授業の進め方も説明する |
| 中2の秋 | 部活の中心学年になり忙しい | 通えない週の家庭学習の方法を用意する |
| 中3の夏〜秋 | 志望校に合わせた転塾 | 志望校別の対策と、面談で受験までの計画を示す |
| 年度の切り替え(2〜3月) | 学年が上がり月謝が上がる | 新学年の内容と料金を早めに案内する |
退塾の申し出を受けたときの対応
申し出を受けたら、引き止めるより先に理由を聞き切ります。理由によっては、退塾ではなく休塾やコース変更で続けられることがあります。続けられない場合も、気持ちよく送り出すことが、紹介や再入塾につながります。
理由を聞き切り、引き止めすぎない
最初の理由のあとに「ほかに気になっていたことはありますか」ともう一度聞くと、本当の理由が出てくることがあります。聞いた理由は分類して記録し、月末の講師ミーティングで共有します。強く引き止めると、紹介や再入塾の機会まで失います。
休塾やコース変更を提案する
部活の大会前や体調の問題など、一時的な理由なら、1〜2か月の休塾を提案できます。費用の理由なら、通塾回数を減らすコースや、家庭学習中心のコースへの変更も選択肢になります。あらかじめ休塾とコース変更のルールを決めておくと、その場で提案できます。
解約のルールを入塾時に明確にしておく
退塾の手続きでトラブルにならないよう、いつまでに申し出れば当月で退塾できるか、前払いの授業料や教材費をどう扱うかを、入塾時の書面に書いておきます。
学習塾の契約のうち、期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものは、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たります。この場合、書面を受け取ってから8日以内のクーリング・オフや、中途解約が認められ、中途解約のときに塾が請求できる金額には上限があります。提供開始前は1万1,000円、提供開始後は提供済みの授業の対価に加えて、2万円か1か月分の授業料相当額のいずれか低い額が上限です。
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」。講習や年間契約などで対象になるかは契約内容によって変わります。最新の内容は公式でご確認ください。
通えない日の学習をつなぐ仕組み
時間を理由にした退塾は、通えない週も勉強が途切れない仕組みがあると防ぎやすくなります。部活で通塾日が減った生徒に、家で取り組める演習を用意しておくと、「塾に行けない=やめる」にならずに済みます。
マナモンは、株式会社THREE D PLUSが運営する、LINEで使う中学生の学習アプリです。LINEで友だち追加するだけで使えるので、アプリのインストールや端末の配布が要りません。
- 中学数学の中1〜中3の全範囲を収録しています
- 同じ単元でも数字が毎回変わる問題で、繰り返し演習できます
- 途中式を飛ばさない解説を1ステップずつ表示するので、塾にいない時間も一人で進められます
生徒一人ひとりが自分のLINEで使うアプリなので、塾で使う場合は、通えない日の家庭学習の教材として生徒にすすめる形になります。家庭学習の教材を自塾の教材として持つ考え方は「塾向け教材のOEMとは」でも説明しています。
よくある質問
退塾率はどれくらいなら問題ないですか
塾の形態や地域、学年構成で変わるため、一律の目安はありません。自塾の数字を毎月記録し、前年の同じ月や学年別に比べて増えていないかを見るほうが役に立ちます。卒業による退塾は分けて数えてください。
退塾の理由を保護者が教えてくれません
申し出の場では本当の理由が言いにくいものです。「今後の参考にしたいので」と前置きして、成績、時間、費用、雰囲気のどれに近いかを選んでもらう形にすると答えやすくなります。生徒本人に聞くと別の理由が出てくることもあります。
保護者への報告は毎月必要ですか
全員に長い報告を書く必要はありませんが、月1回は何らかの形で様子を伝えることをおすすめします。数行の報告でも、塾が子どもを見ていることは伝わります。面談は学期に1回程度を目安にし、要注意の生徒は早めに設定します。
講師との相性が理由のときはどうすればいいですか
可能なら担当講師を替えます。替えられない場合は、塾長が授業の前後に声をかける回数を増やす、座席を替えるなど、生徒が教室で過ごしやすくなる手を打ちます。講師を責めるのではなく、組み合わせの問題として扱います。
退塾した生徒に連絡してもいいですか
退塾後に営業の連絡を繰り返すのは避けたほうがよいでしょう。講習の案内などを送る場合は、退塾時に連絡してよいかを確認しておきます。個人情報の扱いは、入塾時に示した利用目的の範囲で行ってください。
月謝を値下げすれば退塾は減りますか
費用が本当の理由である家庭には効くことがありますが、効果が見えないことが理由の場合は、値下げしても退塾は減りません。まず報告の仕方や学習の見える化で効果を伝え、それでも費用が理由なら、回数を減らすコースを用意するほうが塾の経営への影響も小さくなります。
塾・教室の方へ
マナモンは、LINEで動く中学数学の演習教材です。塾・教室での導入や、自塾の名前での提供(OEM)のご相談を受け付けています。しくみと導入までの流れをまとめた資料(4ページ)は、ご請求いただいた方にお送りしています。提供の形と料金は、お話を伺ってから個別にご案内します。
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