数学の応用問題が解けない中学生の多くは、解き方を「考え方」ではなく「手順や答え」で覚えています。そのため、練習ではできたのに、テストで数字や聞き方が変わると手が止まります。
応用問題は、特別なひらめきがないと解けないものではありません。基本の問題で使った考え方を、少し形の違う問題に当てはめる練習をすれば、少しずつ解けるようになります。この記事では、応用が解けない原因の見分け方と、家でできる練習の進め方を、具体的な問題の例で紹介します。
練習ではできたのに、テストで解けない場面
結論から言うと、テストで止まるのは、練習のときと「何かが変わった」場面です。どこが変わると止まるのかを知ると、原因が見えてきます。
数字や式の形が変わると止まる
たとえば、ワークで「4x−7=13」を何回も練習していたとします。この問題は、−7を右に移して4x=20、両辺を4でわってx=5です。
ところがテストで「7−2x=1」が出ると、手が止まる子がいます。xの前の数がマイナスになり、xが式の後ろに来ただけですが、練習した形と違うので、どう動かせばよいか迷ってしまいます。この問題は、7を右に移して−2x=−6、両辺を−2でわってx=3です。
この記事の式は、説明のために作った例です。
文章題になると式が立てられない
計算問題はできるのに、文章題になると止まるのもよくある場面です。
「1個120円のりんごを何個かと、200円のかごを1つ買うと、代金は920円でした。りんごは何個ですか」という問題なら、りんごの個数をx個として、120x+200=920という式を立てます。200を右に移して120x=720、x=6なので、6個です。
この問題で止まる子は、計算ではなく「何をxにするか」「どの数とどの数が等しいか」を決めるところでつまずいています。
問題の聞き方が変わると止まる
同じ単元でも、「xの値を求めなさい」ではなく「この方程式の解が3になるとき、aの値を求めなさい」のように、聞き方が変わると止まる子もいます。聞かれていることが、練習した問題と逆の向きになっているからです。
応用問題が解けない4つの原因
応用問題が解けない原因は、大きく4つに分けられます。原因によって練習の仕方が変わるので、まずどれに当てはまるかを見分けましょう。
| 原因 | よくある様子 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 手順や答えを丸暗記している | 同じ問題は解けるが、数字が変わると止まる | 数字だけ変えた問題を出すと解けない |
| なぜその手順かを説明できない | 解けるが、理由を聞かれると黙る | 「どうしてここで移したの?」に答えられない |
| 基礎の計算に時間がかかる | 応用の途中で時間切れになる | 計算問題10問に時間がかかり、ミスも多い |
| 前の学年の単元が抜けている | 途中の計算で毎回同じところを間違える | 正負の数や分数の計算でまちがえる |

手順や答えを丸暗記している
同じワークを何回もくり返していると、問題を見ただけで答えを思い出してしまうことがあります。本人は「解けた」と思っていても、実際には答えや手順を覚えているだけ、ということがあります。
この場合、数字だけを変えた問題を自分で作って解いてみると、すぐに分かります。数字が変わっても同じように解ければ、考え方が身についています。
なぜその手順になるかを説明できない
方程式で「移項するときは符号を変える」と覚えていても、なぜ変えるのかを説明できない子は多いものです。理由が分かっていないと、形が少し変わったときに、どの手順を使えばよいか判断できません。
移項は「両辺から同じ数をひく(たす)」ことを短く書いたものです。4x−7=13なら、両辺に7をたすと4x=20になります。この理由が分かっていれば、7−2x=1のような形でも、両辺から7をひけばよいと考えられます。
基礎の計算に時間がかかる
応用問題は、式を立てたあとに計算が続きます。計算に時間がかかると、考える時間が足りなくなり、途中で時間切れになります。
基礎の計算を速く正確にすることは、応用問題を解くための準備でもあります。
前の学年の単元が抜けている
中2の連立方程式は中1の方程式が、中3の2次方程式は中1・中2の式の計算が土台になっています。前の学年の単元が抜けていると、いまの単元の考え方が分かっていても、途中の計算で間違えます。
毎回同じ種類の計算でまちがえるなら、その計算を習った単元までさかのぼって解き直すのが近道です。中学数学の単元のつながりは、中学数学の単元一覧でも確かめられます。
考え方を身につける練習の進め方
考え方を身につけるには、同じ問題をくり返すより、少しずつ形を変えて解く練習が役に立ちます。次の5つのステップで進めます。

ステップ1 数字を変えて、もう一度解く
1問解けたら、数字だけを変えた問題を解きます。4x−7=13が解けたら、5x−3=17(5x=20、x=4)のように、形は同じで数字だけ違う問題です。
自分で数字を変えるときは、答えが整数になるように作るのがこつです。先に答えを決めて、x=4なら5×4−3=17、という順に作ると、計算しやすい問題になります。
ステップ2 手順を言葉で説明する
解き終わったら、1行ごとに「なぜこうしたか」を声に出すか、ノートの横に書きます。
- 両辺に3をたして、xのある項だけを左に残した
- 両辺を5でわって、xを1つにした
説明が止まった行が、考え方があいまいなところです。その行だけ、教科書や解説を読み直します。
ステップ3 問題の形を変えて解く
数字を変えても解けるようになったら、形を変えます。xの前の数をマイナスにする、xを右側に置く、かっこをつける、といった変え方です。
| 練習した形 | 形を変えた例 | 解き方の流れ |
|---|---|---|
| 4x−7=13 | 7−2x=1 | 両辺から7をひいて−2x=−6、両辺を−2でわってx=3 |
| 4x−7=13 | 13=4x−7 | 左右を入れかえて4x−7=13と同じ形にし、x=5 |
| 4x−7=13 | 2(x−1)=8 | かっこを外して2x−2=8、2x=10、x=5 |
表の式は、説明のために作った例です。
形が変わっても、やっていることは「両辺に同じことをして、xを1つにする」で同じです。このことに気づくと、初めて見る形の問題でも、どこから手をつければよいか考えられるようになります。
ステップ4 文章題は「式を立てるまで」を練習する
文章題が苦手な子は、最後まで解こうとせず、まず式を立てるところまでを何問も練習します。式を立てる手順は、次の3つです。
- 何をxにするかを決めて、ノートに書く(例:りんごの個数をx個とする)
- 問題文の中で「等しいもの」を見つける(例:代金の合計が920円)
- 等しいものを、左の式と右の式で表す(例:120x+200=920)
同じ問題で、聞かれるものを変えてみるのも練習になります。たとえば「りんごを6個と、1個x円のみかんを4個買うと、代金は1,000円でした。りんごは1個120円です」なら、720+4x=1000という式になり、4x=280、x=70で、みかんは1個70円です。
ステップ5 間違えた問題は、日を空けて解き直す
間違えた問題は、解説を読んだその日に解き直すだけでなく、3日後や1週間後にもう一度解きます。日を空けても解ければ、考え方が身についています。
解き直すときは、数字を変えた問題にすると、答えを覚えて解いてしまうことを防げます。
単元別のつまずき例と対処
応用問題でつまずきやすいところは、単元ごとにある程度決まっています。代表的な例と対処をまとめます。
| 単元 | つまずきやすいところ | 対処 |
|---|---|---|
| 方程式(中1) | 文章題で何をxにするか決められない | 「求めるもの」をxにすると決めて、まず式だけ立てる |
| 1次関数(中2) | 2点から式を求める問題で止まる | 「傾きを先に出す」順番を言葉で覚える |
| 図形の証明(中2) | 何から書けばよいか分からない | 結論から逆にたどり、必要な条件を先に書き出す |
| 2次方程式(中3) | 因数分解できない式で止まる | 解の公式を使う場面を、因数分解できる式と見比べる |
1次関数の2点を通る直線の例
1次関数で、「2点(1,3)と(3,7)を通る直線の式を求めなさい」という問題を考えます。
まず傾きを出します。xが1から3まで2増えると、yは3から7まで4増えるので、傾きは4÷2=2です。式をy=2x+bとおいて、点(1,3)を入れると、3=2×1+bなので、b=1です。答えはy=2x+1です。
この記事の式は、説明のために作った例です。
この問題が解けたら、通る2点を変えたり、「傾きが2で点(1,3)を通る」のように聞き方を変えたりして練習します。どの聞き方でも「傾き」と「切片」の2つを決める、という考え方は同じです。
図形の証明の書き始め
証明が苦手な子は、最初の1行から順に書こうとして止まります。先に「結論を言うには何が必要か」を考え、必要な条件を図に書きこんでから書き始めると、手が動きやすくなります。
学年別・時期別の練習の考え方
応用問題の練習は、学年と時期によって重点が変わります。
中1・中2は「形を変える」練習を習慣にする
中1・中2の定期テストでは、基本の問題に加えて、数字や聞き方を変えた問題が出ることが多いです。普段の家庭学習で、1問解いたら数字を変えてもう1問、という習慣をつけておくと、テストで止まりにくくなります。
中3は前の学年の応用を見直す
中3の入試に向けた問題では、1つの問題の中に、中1・中2で習った考え方がいくつも組み合わされています。苦手な単元があれば、前の学年の応用問題までさかのぼって解き直しましょう。
テスト前は「基本を数字を変えて」から応用へ
テスト前は、いきなり応用問題に取り組むより、範囲の基本問題を、数字を変えても解けるか確かめるところから始めます。基本が数字を変えても解けるようになってから、ワークの応用問題に進むと、つまずいた理由が分かりやすくなります。
数学の勉強の進め方全体は、中学生の数学の勉強法でも紹介しています。
保護者ができること
保護者が数学を教えられなくても、考え方の練習を手伝うことはできます。
「どうしてそうしたの?」と聞く
解き終わった問題を見て、「この行は、どうしてこうしたの?」と1つだけ聞いてみてください。答えが合っているかどうかより、本人が手順を言葉にできるかが大切です。説明が止まったところが、次に練習するところになります。
答えが合っていても、数字を変えた問題を出す
答えが合っていても、それが考え方のおかげなのか、答えを覚えていたからなのかは分かりません。問題の数字を1つだけ変えて「これも解ける?」と聞くと、身についているかを確かめられます。
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- 同じ単元でも数字が毎回変わる問題で、答えを覚えるのではなく、数字が変わっても解けるかで考え方が身についたかを確かめます
- 途中式を飛ばさず、やさしい言葉で1ステップずつ解説します
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よくある質問
応用問題は、基本ができてから取り組むべきですか
基本の問題を、数字を変えても解けるようになってから応用に進むのがおすすめです。基本があいまいなまま応用に取り組むと、どこでつまずいたのかが分かりにくくなります。
応用問題を何分考えても分からないときはどうすればいいですか
10分ほど考えても手が動かないときは、解説を読んでかまいません。読んだあとに、解説を見ずにもう一度解き、数字を変えた問題でも解けるか確かめましょう。
数学のセンスがないから応用が解けないのでしょうか
応用問題が解けない原因の多くは、丸暗記や基礎の抜けなど、練習の仕方で変えられるものです。まずは記事の中の4つの原因のうち、どれに当てはまるかを確かめてみてください。
問題集の応用問題は全部解いたほうがいいですか
全部を解くより、間違えた問題を日を空けて解き直すほうが身につきやすいです。時間が限られているときは、テスト範囲の基本問題と、間違えた応用問題の解き直しを優先しましょう。
文章題だけが苦手です。何から始めればいいですか
まずは答えを出さずに、式を立てるところまでを何問も練習します。何をxにするか、何と何が等しいかをノートに書いてから式にすると、手順が身につきやすくなります。
家で数字を変えた問題を作るのが大変です
先に答えを決めてから数字を当てはめると、答えが整数になる問題を作りやすくなります。たとえば答えをx=4と決めたら、5×4−3=17なので「5x−3=17」という問題になります。数字が変わる問題を収録した問題集やアプリを使うのも1つの方法です。
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